複数の言語で生きて死ぬ

「境界」が育む豊かさ。境界に生きることには時に困難が伴うけれど、一つの言語に囚われないことで、視界が広がっていく。

・外国語を使って暮らすことの自由さ、複数の言語で生きることの豊かさが、別の国ではその価値を認められず、不自由さの原因になる。

・「日本人の優しさに騙されると外国人の日本語で留まる」「日本語が上手になる」ことの意味は、「日本人のような日本語」話者になることではなく「自分の日本語が上手になる」ことだ。

・(イソップ寓話こうもりにふれて)どちらからも「裏切り者」「危険な者」として、たたきのめされたあげく、太陽のもとから永遠に放逐される。別のエンディングもある。こうもりのように状況にあわせた対応ができる人は、機転をきかせて困難を乗り越えられるという教訓で終わる。さらに一歩進んで、片方の世界だけを素晴らしいものと思う者には得られない望みを、こうもりこそが手にすることもあるはずだと、願うことはできないだろうか。

・さまざまな物語に共通して横たわるのは、支配-被支配という概念である。この場合の支配-被支配は、政治的・社会的・文化的なさまざまな様相を呈している。この支配-被支配の究極の形が戦争であるが、支配-被支配の不幸は、言語使用を指標として、さまざまな形で表れてくる。